音楽作品です。
過去2年、春の初作は、お菓子シリーズでしたが、今年は、市販のお菓子は、やめにしました。
三月上旬は、春とは呼ばれるものの、明るい晴れ晴れとした気持ちには、まだ至れない頃です。もやっとした不思議な分かりにくい心持ちで、抜け出たのか、まだトンネルの中なのか、本当にこのまま行っていいのか、悩みに沈む季節でもあります。
やがて、お彼岸を迎える。学校の合格発表もその頃全て終わる。と同時に、桜が開花します。
そう。一斉に淡いピンク一色に塗り尽くされた桜の下で、人の心の中は様々な色に塗り分けられています。切なくも美しいひと時であります。
さて、今回の曲に登場させたい人物ですが、感受性はすごく強いけれど、色々なクセのある人と接することが、なかなかうまく出来ない、内気な、高校を卒業したばかりの十八歳の女の子をイメージしました。
時代は昭和五十年頃へ飛びます。桜も咲き出した、お彼岸のお参りの後、参道の坂道(※1)を、小さい頃お婆ちゃんに買ってもらったお菓子と同じお菓子を探して歩くけど、自分の好みの人を探しているような想いと重なってしまう。そんな愛らしい情景です。
曲が、多少前衛的、アンニュイ、和風ジャズのようなのは、ちょうど桃井かおりさん主演の懐かしの昭和映画(松本清張原作「疑惑」)を見た後だったのが尾を引いています。桃井かおりさんや椎名林檎さんのイメージが似合う曲調を意識してます。
一応、歌詞を付けてみました。少し、わらべ歌、かぞえ歌風です。
十色 ( 10 Colors )
by imakat
※ トロンボーンまたはトランペットの音が主旋律。エンディングは数え歌。
<前奏> 55秒から歌
十色(といろ)の人波(さっとね)消え去り
十色の靴音(ずっとね)響いてる
<間奏> 1分23秒から歌
十色の爪どれが好き?
十色の髪誘う停留所
お彼岸の観音様に 願を懸けた
変な 夢ばかりは もう嫌だから
今を掴みたい
桜は ゆらゆら ふわ〜
<間奏> 2分29秒から歌
ずっと坂が続く道 出店(でみせ)は原色十色
ばあちゃんのお駄賃持って歩く
十年前のお菓子探す
一つ 甘過ぎず
二つ 酸っぱ過ぎず
三つ 辛(から)過ぎず
四つ 苦(にが)過ぎず
五つ 大き過ぎず
六つ 小さ過ぎず
七つ 硬過ぎず
八つ 柔らか過ぎず
九つ 熱過ぎず
十で 冷た過ぎず
そんな人がいい。
※1:鴨江観音に続く鴨江小路の坂。私の記憶に残る彼岸の「おかもえ参り」は、昭和三十五〜四十年代頃が鮮明で、まず鍛冶町通りの新川の橋の上で傷痍軍人の物悲しいアコーディオンを聴くのがスタート、出店は、そこから鴨江観音まで、坂道沿いにずっと続いていました。実に、その頃の「おかもえ様」は、線香の煙、砂埃と煙草、薬物的な変な匂い、奇形や障害を見せ物にする小屋の悲しさ暗さ、そうした中で、華やかな明るさは、混じることが出来ず、プカプカ浮いているような感覚でした。しかし、昭和五十年頃になると、明るさや原色が混じり出して豊かさを感じるようになっていきました。
No.62 (Mar/2019)(Cubase)