はじめに
曲に豊かな表情をつける方法の一つに「和音の工夫」があります。今や生成AIが自動的に曲を作ってくれる時代ですが、AIが作った曲は何度聴いても心に刺さらない…そう感じるのは私だけではないはずです。 やはり自分で和音を工夫して音楽を作りたい。そう思ってDAW(CubaseやGarageBand)に向かうのですが、高齢になってくると、ますます複雑化するDAWの操作がどんどん億劫になってしまいます。特にDAWには「ギターの指板型エディタ」が搭載されていません。高機能なギター音源(Ample Soundなど)を使えば指板入力も可能ですが、そこへ辿り着くまでの操作すら遠く感じてしまいます。
「複雑怪奇な装置から、自分に必要なことだけを抜き出した簡単な仕組みを作りたい。まるで介助ロボットのようなアプリが欲しい」。そんな思いから、生成AIの力を借りて、Macで動く自分専用の「マイギターコードアプリ(Python/Tkinter)」を自作しました。
介助アプリに求めた「3つの必須機能」
このアプリの目的は非常にシンプルです。以下の3つのステップで、音楽制作を強力にサポートしてくれます。
ステップ1:指板を押しながら和音を作る(本物のギター感覚)
アプリ上の指板をクリックすると、まるで本物のギターの弦を押さえたようにその「単音」が即座に鳴ります。「Shiftキーを押しながらクリック」すると、全体の「和音」がジャラーンと鳴ります。画面が固まることもなくサクサクと音を探れるため、直感的にコードの響きを作っていくことができます。
ステップ2:コードネームを調べる(自動取得&AI解析)
指の位置が決まったら、「指位置確認」ボタンを押します。すると、裏側で外部サイトと通信し、適合するコードネームを自動で取得してくれます。 しかし、ベース音を追加した分数コードなど、既存のサイトでは「コードネームなし」と判定されてしまうこともあります。そんな時は、アプリ上の指板画像をコピーして生成AI(Gemini)に解析を依頼します。「最も一般的な解釈としては E13sus4、または分数コードの Bm11/E です」といった見事な回答が得られるので、それを自分専用のコードネームとして登録しておきます。
ステップ3:DAWへMIDI出力する(ドラッグ&ドロップ連携)
作った和音をCubaseやGarageBandなどのDAWで使いたい時、「MIDI出力」ボタンを押すと、自動生成されたMIDIファイル(.mid)がMacのFinderでハイライト表示されて手前にポップアップします。あとはそれをDAWのトラックへ直接ドラッグ&ドロップするだけ。クリップボードの制約を受けない、確実でストレスフリーな連携です。

使い勝手を向上させる裏側のインフラ設計
さらに、過去に作ったコードを効率よく再利用するための「インフラ設計」にもこだわりました。
- 右クリック一発で画像ロード&全自動発音
「前に作ったあの和音、どんな響きだったかな?」と思った時、わざわざアプリを立ち上げる必要はありません。Finderに並んだ指板画像(サムネイル)を右クリックし、自作のクイックアクションを選ぶだけ。裏側でDAWが立ち上がり、アプリが該当画像を読み込んでフワッと起動し、全自動でギターが「ジャラーン」と鳴る流麗な連携を実現しました。
- ファイル名がそのまま音符に!データとMIDIの直結設計
例えば guitar_fretboard_30-25-22-18-14-n.jpg というファイル名。この「30-25-22-18-14-n」という文字列は、1弦から6弦までの指板の絶対値を表しています。アプリはファイル名からこの文字列を抽出した瞬間、「絶対値+35=MIDIノートナンバー」というシンプルな計算式で、即座にMIDIデータへ変換します。これにより高速で音が鳴ります。 - 意識させないデータベース自動同期
変更を加えたり別の画像を選んだ瞬間に、画面と裏側のExcelデータベースが100%自動で同期します。いちいち「保存ボタン」を押す手間を省くオートセーブ機能を搭載しました。
開発の裏側:AIバケツリレー
このアプリはPythonで600行を超える大規模なものですが、すべて自分でプログラミングしたわけではありません。私が構築している「AIバケツリレー」が役に立ちました。 まずNotebookでシステム全体の作戦を練り、設計図を書かせます。そして、いざ大規模なコードを生成する際は、Google AI Studioという「絶対にコードを省略しない重装備のAI」へ指示書を渡して一括で出力させました。適材適所でAIを使い分けるこのエコシステムのおかげで、複雑なアプリも無事完成に漕ぎ着けました。
おわりに
歳を重ねるにつれ、既存の高機能すぎるツールに合わせるのが辛くなることがあります。しかし、AIをパートナーに据えることで、必要な機能だけを抽出した「自分専用の介助ロボット」を自作できるようになりました。 このアプリのおかげで、再び楽しく音楽制作に向かうことができそうです。
以上



