イーシャは、 靴屋の前で、いつも立ち止まる。そして踊る。
いや、踊るといっても、通行人に見せびらかすのではなく、ショーウインドウを見ながら、足だけ軽やかに、とても控えめに、数秒間、タップを踏むのである。また30秒くらいしたら、数秒タップをする。
彼女は、思い浮かぶフレーズにアドリブでサッと足を動かしているのである。
よく少女がする所作だ。
それがお洒落に、街に溶け込んでいる。
彼女自身は全く気がついていないのだが、彼女が通りかかる頃合には、実は、数十人の人が、彼女の作り出す光景、その上品な瞬間に注目しているのだった。
可憐な少女から大人へ移ろう姿を表現しようと思いました。曲としては、変則的なリズムが展開されますが、繰り返すことにより、聴きやすくなっていると思います。和音構成はあまり凝らず、マイナーな素地に、メジャーなお洒落感を上から塗った感じに仕上げています。
時代は、昭和終わりから平成の初め頃でしょうか。
No.72 ( July/2021)( Cubase )