小噺を一つ〜「少し悲しく見える切り株」のお話。

今日ご紹介するのは、木の切り株であります。

家から15分くらい歩いたところの広場にあります。

腕に縛られたロープは、野球用のネットを引っ張っています。

それでは、ここで、小噺を一つ。


<元気一杯だが少し悲しく見える切り株 浜松市浜北区東美薗>

「お前。ここはやっぱり突破しかないぞ。」

「ここをですか。本当にここをですか。こんなに見通しのいい原っぱの上を、逃げ切れるわけがないですよ。見てください。あちこちにサツがいますよ。」

「。。いいか。真っ直ぐ対角線を突っ走れ。桐生になったつもりで。」

「あはい。。デコボコもないし。走りやすいかって言えば、まあ、走りやすい方かも知れないですけど。あはい。」

「誰が藤井聡太になれって言った。。桐生になれ。

いいか。チャンスくるぞ。準備しろ。。今だ!ゴー!

ドタドタ。。。

「馬鹿野郎、お前遅いんだよ。。また捕まっちゃったじゃないか。トロいなあ。」

「コーチ。。最近、思うんですけど。こんな練習で、本当にオリンピック出れるんでしょうか。
そりゃ。夢では見ますよ。サツに追われて逃げまくるシーンって。
今は目が覚めてるから、なんかその。弱いんすよ。

それに。俺、何やったって言うんですか。何もしてないっすよ悪いこと。
イチ、善良な小市民っすよ。虫も殺せないですよ。」

「確かにそうだ。しかしよく考えてみろ。やる気になるためには、人参ぶら下げるか、ケツに火をつけるか、しかないんだよ。しょせん。そうだろう。
人参ぶら下げて俺がお前の前を走るだなんて俺が疲れるじゃないか。俺は最初からそれは無理だって言っただろう。
色々工夫した挙げ句、今に至っているわけだろう。
他に方法を思いついたら言えよ。」

「分かりました。もう一本お願いします。」